プロジェクトノート
- 健康増進支援サービス事業
毎日の食事を見直そう!加齢に伴う低栄養のリスク
皆さんは毎日の食事の中で、必要な栄養がきちんと取れているでしょうか?
これって意外と難しい質問ですよね。なんとなく健康に配慮してバランスは気にしていても、きちんと栄養が取れているかまで気にしたことが無い方も多いのではないのでしょうか?
少食な方、いつも同じようなメニューになってしまう方、あっさりした野菜中心の食事が多いという方などなど、様々な食生活の方がいると思います。
油断すると、知らず知らずのうちに自分の食べたいものに偏ってしまうなんてこともあるかもしれません。
食生活の偏りは、健康的に生きるために必要な量の栄養素が摂取できていない低栄養という状態に陥ることがあります。
低栄養状態とは?
健康的に生きるために必要な栄養素が取れていない状態のことです。
偏食などの食生活の乱れが習慣化されてしまうと、自分では気づかないうちにこの状態になりやすくなってしまいます。特に年齢を重ねる中での食生活の変化においては要注意。
一般的に高齢になると、食事量が減り、味付けもあっさりとした食事を好むようになると言われています。たとえば、果物や生野菜、肉類といったメニューを口にする機会が減り、野菜類もいつも同じよう定番なものばかりしか口にしなくなると、ビタミンやミネラル類も不足しがちになり、食生活に偏りが生まれてしまうわけです。
身体の変化で食生活にも変化が起こる
このような低栄養状態に陥る原因の一つとして、高齢になるにつれて見られる身体機能の変化があげられます。かむ力や飲み込む力の低下、味覚の低下、嗜好の変化などですね。他にも、唾液の分泌が少なくなるので飲み込みにくくなり、むせたり、つかえたりしやすくなったりということもあります。
こういった身体的な変化がおこると、固いものや繊維質の多いものを食べることが難しくなるといった食生活への影響が出てきます。繊維質の多いものを食べる機会が減ってしまえば、食物繊維の不足につながってしまいます。このように、好き嫌いをしている自覚が無くても、身体的な変化によって食事に偏りが生じやすくなるのです。
身体的な変化以外にも、下記のような要因で低栄養に陥るケースもあります。
●独居などの社会的要因
●認知症やうつ病などの精神的、心理的要因
●多くの薬剤を服用することによる食欲不振
●義歯不調をはじめとする口腔内の問題
食事以外でも身近なところでの様々な変化が、低栄養の原因となってしまうことがあるんですね。
低栄養が引き起こす可能性のあるリスクとは?
低栄養の状態は、死亡率や介護認定のリスクを高めることがわかっています。
具体的な内容として、下記のようなリスクが挙げられます。
●生活自立度の低下
●筋力の低下
●感染症をおこしやすくなる
生活自立度とは、誰かに介護などの支援を受けることなく、健康的に自立した生活を過ごせるかどうかの度合いのこと。健康寿命という言葉を耳にするように、介護などを受けずに自立して過ごせるということは健康な生活を送る上でとても重要なキーワードです。
低栄養かどうかは、たんぱく質やエネルギーの欠乏状態を示す栄養指標の血清アルブミン値、BMIや体重の減少によってリスクを評価・判定する方法があります。
これらは体重測定や血液検査により知ることができるので、気になる方は一度検査してみるのもいいかもしれません。
低栄養を予防するには?
では、低栄養を予防するためにはどんなことに気を付ければいいでしょうか?
まず大切なことは、たんぱく質を多く含む食品を食べることです。
たんぱく質を多く含む食品を食べることで、体重の減少の抑制、筋力の維持や筋肉の生成などが期待できます。高齢女性で、たんぱく質摂取量が少ないとフレイルの出現リスクが増加することも確認されています。
※フレイル:加齢とともに心身の活力(筋力や認知機能など)が低下し、生活機能障害、要介護状態、そして死亡などの危険性が高まった状態
また、様々な食品を万遍なく食べている人は、買い物や食事の準備などの手段的自立と、新聞や本を読むなどの知的動性の低下のリスクが小さいことがわかっています。
低栄養にならないために意識したいこと
繰り返しになりますが、動物性のたんぱく質の摂取が不十分にならないように注意する事は必要。合わせて油脂類なども不十分にならないようにしなければなりません。胃に重い食材などは、無意識のうちに食べることを避けてしまうことがあるため、食事のバランスの見直しが必要です。
また、魚と肉の摂取は1:1程度にして、肉は偏りがなく様々な種類を摂取することも大切です。
牛肉はなんとなく重いし...なんて苦手意識がある方は、調理方法を変えてみることも良いでしょう。
手軽な方法のひとつとして、毎日200ml以上の牛乳を飲むように心がけると、たんぱく質の欠乏を予防することができます。牛乳にはたんぱく質が豊富に含まれており、現在の食生活を大きく変更せずとも取り入れることができる食材ですよね。
まとめ
年齢の変化とともに訪れる身体的な変化が起因して、好き嫌いをしているつもりが無くても食生活に偏りが生まれることで、低栄養になるリスクが高まります。バランスの良い食事(主食+主催+副菜)をそろえて、魚・肉・卵などの良質なたんぱく質を十分にとり、1日三食の食生活を心がけることが大切です。
独りの食事ばかりでは食生活に偏りが出やすいので、みんなで食事する会食の機会を設けることも良いでしょう。食事をするだけでなく、自身の食生活について情報交換などをすれば、見落としていた自分の偏食に気づくいい機会になるかもしれません。
加齢に伴う身体的な変化、食生活の変化というものは、普段の生活の中では気づきにくいものかもしれません。あまり自身の食生活を気にしていなかった人は、この機会に一度見つめ直してみてくださいね。
【出典】
《高齢者のための食生活指針15ヵ条》 栄養改善プログラム
e-ヘルスネット 低栄養/PEM
厚生労働省「介護予防マニュアル」分担研究班. 栄養改善マニュアル(改訂版): (参照2017-05-12)
厚生労働「超高齢化社会を見据えて、高齢者がよりよく生きるための日本人の食事を考える」(独)国立健康・栄養研究所 栄養教育研究部 髙田和子
厚生労働省 高齢者(PDF:1274KB)
厚生労働省 高齢者(PDF:1274KB)
葛谷雅文 高齢者の低栄養 老年歯学2005;20(2) : 119-123
熊谷修 他「地域在住高齢者における食品摂取の多様性と高次生活機能低下の関連」日本公衆衛生雑誌 2003 50(12) : 1117-1124